賃貸住宅経営で「修繕」が重要な理由

賃貸住宅経営で「修繕」が重要な理由

マンションは「建物管理の良し悪しを見て買え」といわれます。つまり、それだけ建物管理は賃貸アパート・マンション等の賃貸住宅経営にとって重要な要素だということです。特に、収益不動産の資産価値保持や入居率低下を抑えるうえで、定期的な建物の修繕は欠かせません。どうすれば適切な修繕ができるでしょうか。

これだけは知っておきたい賃貸住宅経営のための修繕基礎知識

住宅の建物管理は、基本的に「メンテナンス」と「大規模修繕」に大別されます。

  • メンテナンス

メンテナンスとは共用部の清掃、ゴミ置き場の汚れチェック、共用設備の点検・補修など日常的な建物管理のことです。

エントランス等共用部のメンテナンスが不適切だと、建物の老朽化を加速する要因になります。また、ゴミ置き場周辺のゴミ散乱、共用部の蛍光灯切れなどは入居希望者が内見に訪れた時に悪印象を与え、成約率の低下に繋がります。

メンテナンスは、建物の老朽化加速と空室を防止する予防的な管理と言えます。

  • 大規模修繕

大規模修繕とは、建物全体の老朽化を遅らせ、快適な住環境を維持することで賃貸住宅としての資産価値を守る建物管理のことです。

外壁補修、屋上・屋根・ベランダの防水補修、給排水管補修、手すり等鉄製部の防錆工事などが一般的です。大規模修繕はおよそ10~15年の周期で必要と言われています。

これだけは知っておきたい賃貸住宅経営のための修繕計画の立て方

賃貸住宅の建物管理においては、「メンテナンス費」と「大規模修繕費」の2種類の建物管理費が発生します。

メンテナンス費とは「建物の維持管理に要する恒常的な費用」とされており、この費用は入居者から徴収する管理費で賄うのが通例です。したがって、賃貸住宅経営者の負担は実質的にゼロと言われています。

一方、大規模修繕費とは、建物全体の老朽化遅延、快適な住環境維持、賃貸住宅としての資産価値保持などを目的にした費用のことです。

大規模修繕費は建物の総戸数、築年数、劣化度合、工事内容などにより異なります。ちなみに、少し古いデータになりますが、東京都都市整備局が2013年に実施した調査(※)によれば、賃貸マンションの場合は100万円以内が11.4%、100万円超〜500万円未満が46.5%、500万円超〜1000万円が23.8%、1000万円超〜3000万円が14.9%、3000万円超〜5000万円が1.9%、5000万円超〜1億円が1.0%、1億円以上が0.6%となっています。

このように、大規模修繕費は賃貸住宅経営者の負担が重いため、この負担を軽減し、賃貸住宅経営の安定化を図るうえでも「長期修繕計画」の策定が欠かせないと言われています。

長期修繕計画とは、10~15年の周期で定期的に発生する出費に備え、大規模修繕が必要な個所を予測し、その修繕費概算を計算した「長期修繕計画書」を作成し、それに基づき「長期修繕積立金」を毎月の家賃収入から積み立てる計画のことです。

長期修繕計画書は次の手順で作成するのが基本とされています。

1.修繕個所と時期の把握

 大規模修繕が必要な個所と工事周期の目安は、一般に、

  • 外壁補修:10~15年ごと
  • 屋上・屋根・ベランダの防水補修:12~15年ごと
  • 給排水管補修・交換:12~18年ごと
  • 鉄製部の防錆工事:4~5年ごと

などとされています。

基本的に大規模修繕費は、物件規模が大きくなるに従って、工事費の総額は膨らみますが、規模の大きな物件はその分家賃収入も多くなると見込まれるため、多くの場合、家賃収入に占める大規模修繕費の比率は低下します。

2.大規模修繕費の概算見積もり

 大規模修繕費の概算見積もりには、

  1. 工事業者・管理会社等から相見積を取る
  2. 新築物件の場合はその再調達価格から修繕費を試算する
  3. 大規模修繕必要個所の面積に修繕工事費単価をかけて概算を見積もる

などの方法があります。

3.大規模修繕計画書の作成

計画書の作成は次の手順で行うのが通例と言われています。

  1. 修繕個所・費用概算の目安一覧表を作成する
  2. 過去の大規模修繕履歴があれば、それとの照合で修繕時期の目安を立てる
  3. 長期修繕積立金の積立金額を算出する

これだけは知っておきたい賃貸住宅経営のための大規模修繕工事のポイント

長期修繕計画を立て、大規模修繕時期が来たら、その工事は次の手順で行うのが基本とされています。

1.インスペクション(建物・設備の状況調査)を実施する

 信頼のおける管理会社等に依頼してインスペクションを行い、建物・設備の劣化状況を把握します。

2.修繕個所の優先順位をつける

インスペクションで明らかになった建物・設備の劣化状況を長期修繕計画と照らし合わせ、修繕個所の優先順位をつけます。大規模修繕は外壁補修、屋上等の防水補修、給排水管補修などを一度に行う必然性はなく、修繕積立金等の残額との照らし合わせで工事時期をずらすのは稀ではありません。

ただ、大規模修繕は入居者の安全とその賃貸住宅の信頼性に関わる重要経営課題なので、建物の安全対策が最優先順位になります。一方で、必要な大規模修繕を一挙に行い、さらにエントランス入口のオートロック化・セキュリティシステム導入等による建物・設備のグレードアップも同時に実施すれば、全大規模修繕のコスト圧縮を図れるメリットがあります。

3.施工業者を選定する

施工業者の選定法としては、ウェブサイト等の建物修繕工事業者ランキング上位4~5社から相見積もりを取るなど様々な方法があります。しかし、工事費優先で施工業者を選ぶと手抜き工事、工期長期化など思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。したがって、ここはインスペクションを依頼した信頼のおける管理会社等との折衝で、適正な工事価格を決めるのが賢明でしょう。

賃貸住宅経営の安定は大規模修繕で決まる

賃貸住宅は家賃と入居率を上げる一方、運営費を下げることにより収益が最大化します。このため、経営者の負担が重い大規模修繕は、出口戦略との絡みもあり敬遠しがちです。加えて、長期修繕計画までを含めた賃貸住宅投資提案を行い、大規模修繕の重要性を喚起する不動産仲介会社等が少ないのも実情と言えるでしょう。

しかし、大規模修繕の敬遠は建物の劣化加速と資産劣化の要因になり、入居率低下・空室期間長期化等の家賃収入低下に繋がります。また、出口戦略をとる場合にも、阻害要因になる可能性があります。

したがって、賃貸住宅の競争力を長期間保持し、トータルで収益を最大化する近道は、信頼のおける管理会社等とのパートナー関係構築による建物の適切なメンテナンスと定期的な大規模修繕と言えるでしょう。

 

参考:※:東京都都市整備局「マンション実態調査結果」/2013年3月

http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2013/03/DATA/60n34101.pdf

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